アメリカで就職すると、日本の企業が全てブラック企業に思える。

アメリカの企業で数年、仕事をした後、日本で再就職してからというもの、逆カルチャーショックの連続だった。

中でも驚いたのがタイムカードである。わたしの知っている限り、アメリカにタイムカードは存在しない。フレックス制というのが基本で、就業時間はだいたい10時ぐらいから18時ぐらいまで。19時ともなると、早く帰れとせっつかれたりしたモノだ。そんな、せっつくあなたにも「早く帰れば?」と言ってあげたいくらい。皆、夕方になるとゾロゾロと帰っていく。

個人の責任と言えばそれまでだが、わたしはこれが本来あるべき姿のように思う。確かに労働基準法に違反していないかをチェックするためにも、タイムカードは必要である。我ら日本人は残業が当たり前という国民性なだけに、タイムカードの存在意義は大きい。

だが、そもそも「残業は極力しない」という風潮であれば、タイムカード自体、必要ないと思う。

どんなに忙しくても、夕方6時頃になると、結局、仕事を切り上げて帰っていく同僚達を尻目に、わたしは少しでも多くの仕事をこなそうと、いつも帰宅は最後の方だった。

タイムカードは無かったけれど、一日のスケジュールを管理するソフトへの記入が義務付けられており、週単位で、どのプロジェクトに、どのくらいの時間を費やしたか、一目瞭然で分かる仕組みになっていた。当然のことながら、帰宅時間も記入することとなる。

なので、上司からも「そんなに遅くまで残っていないで、なるべく早く帰りなさい」と注意されることもしばしばだったが、所詮、就業時間は10時〜19時前後である。その割に給料は日本の1.5倍を軽く越えていたのだから、今、考えると「素晴らしきかな、アメリカでの就職時代」である。

帰国後に就職した日本の企業では、朝9時半を1分でも遅刻した日には、タイムカードの始業時間部分に赤で丸を付けられた。

「遅刻ですよ」

という、無言のダメ出しである。たかが1分の遅刻で何が変わるというのか。9時30分なら良くて、9時31分じゃ、何がダメなのか。大人なんだから適当に自分で調整すれば済む話であり、朝の1分をめぐって、社員が一斉にタイムカードに群がる図式に、本気で憤りを覚えた。

しかもほぼ毎晩、帰宅時刻は終電間近で身体は悲鳴をあげている。

「朝っぱらからタイムカードごときで全力疾走できるかい!」と、すっかり鼻白んでしまった。

アメリカで最初に就職すると、日本の企業が皆、ブラック企業に思えてくる。もし、あなたが海外での仕事を辞めて、日本での再就職を望むのであれば、まずは外資系をオススメする。コテコテの古い体質の日本企業に就職すると、仕事以上にカルチャーショックの大打撃が待っている危険性は高い。