海外で就職し慣れてしまうと日本では働けない。

「残業、残業の毎日で参っちゃいますよ、ホントに……」

日本の職場でちょくちょく耳にする、このセリフ。実は、私がシリコンバレーの職場で働いていたときにはタブーなセリフであった。

社長やノルウェー人の上司曰く「OT代の高い人材=仕事のペース配分がうまく出来ない社員である」ということで、わたしはなるべく定時に上がるよう心掛けていた。

ちなみにOTとはOvertimeの略で『残業』を意味する

会社側は残業代として通常の1.5倍〜2倍の給料を支払う義務があり、OTが嵩む社員に対しては「余計な出費を出す社員」という風潮を作り上げ、全力で人件費の削減を目指していたのだ。

こっちだって、したくて残業しているワケでもないのに、余計な出費を増やす社員などと扱われ、理不尽この上なかったが、慣れてしまえば、この合理的な考え方も悪くない。一日のスケジュールが立てやすいというか、仕事の後に「ジムへ行こう」などと、計画を立てる余裕すら出てくる。

この状態に慣れたまま、日本へ帰ってくると悲劇である。

例えば、わたしはデザイナーなのでデザイン会社に就職したのだが、上司が帰るまで、部下達は帰宅できなかった。『何もやることがなくても』であり、これにはさすがに閉口した。20時を過ぎても、当の本人は呑気に新聞なんぞ読んでいたりする。(そんなの家で読みゃいいじゃん!)と、何度、心の中で叫んだことか……。

今となっては笑い話だが、欧米人の個人主義、合理主義というのは、ある意味、徹底しているように思う。

結婚記念日だからと、忙しい中、仕事を早々に切り上げて帰ってしまう部下なんぞは序の口、出社時間はフレックス制ということで、だいたい社員は午前10時前後に出社してくるところ、一人だけ朝7時に出社し、夕方4時には切り上げてしまう営業部の女性がいた。聞けば「フリーウェイのトラフィックジャム(交通渋滞)が嫌いだから」ということで、開いた口が塞がらなかったのを覚えている。仕事に支障が出ない範囲での、OT無しの彼女なりのペース配分ということで許されていたのだが、いやはや、このマイペースっぷりというか、主張の激しさには毎度、驚かされる事も多かった。

帰国後、日本人の勤勉さや謙虚さに触れるにつれ、逆カルチャーショックを受けたものだが、外国人達と働くということは、語学力含め、こういった個の主張的なモノも要求されるということである。すなわち、自分も同じように主張出来るだけのメンタルが必要なワケで、この感覚を引きずったまま、日本で企業に再就職すると、必ず一度は泣くハメになると、誰もが言う。おどかすようで申し訳ないけど。

海外で就職するには先ず必要なのは就労ビザである。

海外で就職するには、当然の事ながらワーキングビザ(就労ビザ)がいる。

その取得方法はいくつかあるが、例えばアメリカの場合、現地の大学に通っている留学生の身であれば、卒業と同時に取得できるBA(Bachelor of Arts)を利用するのが一般的だろう。BAとは『日本の四年制大学卒に相当する』とされる資格で、これさえあれば、卒業後、1年間は合法で働く事の可能なプラクティカル・トレーニングビザ(研修ビザ)が自動的に降りる。(ただし短期大学や専門学校では、たとえ全てのカリキュラムを終了したとしても、このビザは降りないので注意が必要だ。)

アメリカ・ビザの種類と基礎知識|Lighthouse

ビザの有効期限は一年間で、名目も『トレーニング(研修)用のビザ』であるから、この1年の間に会社に掛け合い、研修中の立場から一般就職の立場へとステップアップが必要だ。これには会社がスポンサーになることで申請出来るワーキングビザを取得するのが手っ取り早い。

人によっては、この時点でグリーンカード(永住権)の申請に乗り出す人もいるようだが、グリーンカード取得に、どのくらいの期間を要するかは、ある意味、運任せである。

わたしの周囲では抽選で当たったというラッキーな人や、1~2年で取得できたという人もいるが、5年以上待ったというケースが何件かあり、そういった取得期間の差は謎である。現地の弁護士に聞いても、明確な解答は得られなかったと記憶している。

グリーンカード専門の弁護士に大枚はたけば手続きが早くなるとか、会社の規模が大きければ早いとか、国籍がどうとか、そういう問題でもないとの事で、いつ取得出来るか分からないグリーンカードだけに頼るよりは、会社を通して、先ずはワーキングビザの申請を始めてしまうのが懸命である。

その後、改めてグリーンカードの手続きも始めておけば「ワーキングビザが失効するんで国に帰ります、さようなら」とならずに済む。

ちなみに、このワーキングビザの有効期限は三年間で、有効期限が切れると次に更新する、新たなワーキングビザの有効期限は同じく三年間、よって最初のプラクティカル・トレーニングビザの有効期限の一年間と合わせて、合計七年間は合法で就職が可能である。

二度目のワーキングビザが切れたとしても、グリーンカード、すなわち『永住権』を取得していれば、何の問題もなく、そのまま半永久的に仕事を続けることが可能なので、長くアメリカで働きたいと思ったら、ワーキングビザを取得後、グリーンカード取得へと行動を起こすことをオススメする